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「先行研究の効果的な書き方」出版したい人のための論文書き方講座2

1. 先行研究の場所に “先行研究” を書いてはいけません!

前回「論文の構成」についてのページでは、IMRADという論文の基本的な流れについて紹介しました。今回は、これに引き続き、先行研究の書き方について解説します。

さて、上の題名「先行研究の場所に “先行研究” を書いてはいけません!」とはどういう意味でしょうか。いきなり矛盾することをいわれたので、困惑している方もいるかもしれません。しかし、先生に「論文には先行研究を書くように!」と言われて、そのまま先行する研究をまとめようとすると、失敗することが多いでしょう。論理の流れが上手くいかなくて、書けない!となりかねません。そう、なぜなら「先行研究」には「先行研究」をそのまま書いてはならないからです。

2.  先行研究を書くなら、まず敵と味方を分けろ!

敵 vs 味方の先行研究

では、「先行研究を書け!」と言われたら何を書けばよいのでしょうか。それにはまず、敵と味方を分けることが大切です。

敵と味方を分けるとは?

敵とはここで、自分が展開したい主張や理論の批判者や、攻撃の対象となる研究を意味しています。それに対し、味方とは、自分の主張や理論を補強する研究を意味しています。

敵 = 自分の攻撃の対象となる研究

味方 = 自分の理論を援護してくれる研究

そしてもうお気づきかもしれませんが、先行研究には主に、この敵の研究を書いていきます。正確に言うと、敵の研究の問題点を書いていくのです。たとえば、

「これまで○○という研究では××と言われてきたが、これに対し□□の研究では¥¥と言った。しかしやはり、両者とも△△の点で間違っている。本論は、この問題を…」

というふうに書くのです。「これはすべて自分の攻撃対象で、自分が攻撃するのはここだよ」と示すために、先行研究は書きます。新しい研究とは、過去の研究を乗り越える研究ですので、確かに過去の研究のすべてが「先行研究」になる場合もありますが、それでも表立って攻撃するに至らず、かえって自分の理論の補強につかう方がよいと判断した場合は、先行研究の場所には書かない方がよいでしょう。でないと、先行研究で批判してるのに後で肯定するのか!ということになりかねません。当然、この先行研究の批判の過程で、味方の研究を書いてもいけません。例を見てみましょう。たとえば論文の冒頭で、

「これまで○○という研究では××と言われてきたが、これに対し□□の研究では¥¥と言った。前者は△△の点で間違っているが、後者は@@という点で正しい。」

と書いたとしたら、これは単なる先行研究のまとめになってしまいますよね。ここですでに「正しい」と結論づけてしまっているので、これからさらに論文を続けて書くことが難しくなってしまいます。自分の研究の新しさが伝わらず、「すでに正しい論文があるなら、なぜ研究したのか」というつっこみも入ってしまうでしょう。なので論文には、正確にいうと「先行研究」をそのまま書くわけではないのです。

先行研究を読んだら、まずそれを敵と味方に分けて、その敵の部分がなぜ敵となるのか、間違っているのかということを書いていくのです。ちなみに、敵がいない論文はまずちゃんとした雑誌に通りませんし、出版もされません。なぜなら敵がいない=新しくないからです。また、よくあるパターンとしては、まず最初に敵の問題点を述べ、そのあとに味方の議論の問題点をあげ「自分は味方の議論の欠点を補強する」という議論の持っていき方があります。こうすれば、先行する研究を網羅的に書きながらも、自分の新規性を明示することができます。

私も最初の頃、「論文は先行研究を書かないとだめだよ」と教わって、先行研究を書こうとしたらつまづいてしまいました。学説史を書こうとすると、問題点が曖昧になってしまうからです。先行研究を書くのは、最初はむずかしいかもしれませんが、まずは敵と味方を分けて、敵の問題点を書くという点を抑えておくことが重要です。