アクティブ・ラーニングって何?アクティブ・ラーニングの基礎理論

1 車の運転をしている人と、助手席に座っている人、道を覚えているのはどっち?

アクティブ・ラーニングの基礎理論

アクティブ・ラーニングとは、今最も新しく、教育界で流行している 教授法や学習理論 のことです。どういう効果があるのか、手法があるのか、今後どう変わるのかなどを、ここでは見ていきましょう。では、さっそくですがまず小話を。

ある日の休日、友人と一度も行ったことのないレストランに、ご飯を食べにいくことにしました。今回は友人が運転してくれることになり、あなたは助手席で、外の日常的な景色を眺めながら友人と楽しく話し、目的地に向かっています。犬と散歩している子ども、ランニングしている人、そんなありきたりな街の風景…。数回そんな感じで同じレストランに乗せて行ってもらったのですが、ある日、今度はあなたの運転で行くことになりました。さて、あなたは調べなくてもそのレストランへの道を行くことができるでしょうか。

私がここで言いたいのは、私たちは日常的に、能動的に行動している人の方が、なんとなく経験している人よりも「良く覚えている」割合が高いということです。料理をつくる人の方が、作り方を見ているだけの人よりも、材料の種類や料理の順番をよく知っていますし、文章を読むだけの人よりも、書く人の方が知識が身に付きますよね?「一度行動してみないと、よく理解できない」ということは、経験にも合致することです。このような人間の記憶の仕組みを、教育に生かすにはどうすればよいでしょうか?

アクティブ・ラーニングが目指しているのは、まさにこういうことなのです。アクティブ・ラーニングの手法を用いると、さまざまな分野で成績があがるという報告があるのですが、各国がアクティブ・ラーニングを取り入れる中、日本だけが旧来の手法で授業をしていると(それでも効果のある分野はあります)、各国との差がついてしまうかもしれません。もしかしたら、導入している学校とそうでない学校とでは…教室では…先生では…。ここでは、そんな今をときめくアクティブ・ラーニングの基礎的な理論を紹介します。

2 アクティブ・ラーニングって何? 今後、教育界は代わる!?

「アクティブ・ラーニング」とは、アメリカの大学教育において1980年代に提起され、1990年代になって定義された学習概念です。なかでもBonwellとEisonが1991年に発表した著書、 Active Learning Creating Excitement in the Classroom (アクティブ・ラーニング 教室内のわくわくの創造:筆者訳) に記されている次の定義が、日本で話題になっているアクティブ・ラーニングの原点になっています。

アクティブ・ラーニングとは、

学生たちを巻き込んで行動させたり、自分たちの行為について考えさせたりすること “Anything that involves students in doing things and thinking about the things they are doing ” (筆者意訳)

これを簡単に言い換えると、「学生を授業に巻き込む仕掛け」とでもいえばよいでしょうか。つまり、上の例でいうと、学生に実際に試運転させてみること、料理を作らせてみることですね。

こうした考え方の基本には、学生(=学習者)が知識伝達によるパッシブで一方的な学びから抜け出し、授業者と学生同士、あるいは学生ら同士が共に学び合う(co-learn)ことが目指されています。というのも、そちらの方が教育効果が高い、というデータが続々と出ているためです。

また、こうした学びのあり方は、大学教育に限らず、小中学校・高校、そして社会人研修・企業研修へと広がりつつあります。ペア学習やグループ活動、発表、ディスカッション、対話型ワークショップなど、これらは全て、アクティブ・ラーニング型の学習法です。

3 アクティブ・ラーニングのメリットとデメリット

アクティブ・ラーニング型の学習法を取り入れると、「知識をどう使うか」という学習の質的な側面について、学習者は探求することになります。みんながみんな、知識を用いて自分の思考を運転する、というわけですね。アクティブ・ラーニング型の授業では、正しい知識を適切な場面で活用しようとする場がデザインされることが目指されるのです。

例えば、学校教育では、学習課題の答え合わせをする場面があります。児童・生徒が問題集を解いて、教員が答えを口頭で伝えて各個人で丸つけをする授業もありますが、グループ活動を取り入れ、話し合って、教えあって、答え合わせをするアクティブ・ラーニング型の授業もできます。教員が答えを一方的に伝える授業では、自分で解いた解答が教員の示す正答と一致しているかどうかの確認にとどまります。しかし、グループ活動で答え合わせをする授業では、「どうやって答え合わせをするか」から話し合いが始まり、「何が正答か」を話し合うことになります。 児童・生徒がみんな、自分で考えて、知識を活用するというわけです。

話し合いの中で意見や考えが一致しなかったときは、「どの意見や考えが適切かどうか」を学習参加者内で、さらに話し合わなければなりません。同様に、社会人研修・企業研修でも対話型ワークショップやディスカッションを取り入れることで様々な学習方略が展開され、より実践的な知識を獲得し活用していくことができるようになりつつあります。

ただ一方で、アクティブ・ラーニングには実践上の課もあります。学習者同士で円滑なコミュニケーションがなされなかったり、「アクティブ・ラーニングのやり方がわからない」といった教育現場での教員の声も多くあるのが実情です。次に、簡単にですが現在試みられている代表的な手法を3つ紹介します。

3 これで明日からアクティブ・ラーナー アクティブ・ラーニング実践方法の紹介

ここでは、誰もがアクティブ・ラーナーとなるべく、いくつかのアクティブ・ラーニングについてのグループ技法を中心に紹介していきます。注意してほしいのは、これらがアクティブ・ラーニングの決定的な手法だというわけではないということです。上で紹介した定義を思い出してください。つまりアクティブ・ラーニングとは「学生を授業に巻き込む仕掛け」のことですので、教育の理論に基づく必要はありますが、自分で試行錯誤することが可能なのです。これらの方法も、ただ知るだけではなく、最初は恥ずかしいかもしれませんが、授業に取り入れ、行動してみるということが大切です(これこそがアクティブ・ラーニングなのですから!)。さて、「これまで行われてきた試み」について、見ていきましょう。

・ジグソー法(ジグソーパズルのように、みんなで問題のピースを埋めていくという方法)

ジグソー法とは、グループ内で役割分担を決めて、それぞれが定められた別々の課題をこなし、最後にみんなで教え合うという手法です。 4 人~6 人グループを作る→各メンバーの分担を決める→各グループの同じ分担同士で集まり「専門家」として話し合う→初めのグループに「専門家」として戻り、互いに教え合うという順序で行われます。一言でいうと、「グループ内で、それぞれ別々の事柄について調べて教え合う」という手法のことです。

【学校での実践例】

国語 共通した主人公が登場するいくつかの物語文を、各物語ごとに「専門家」として読み合う。その後、各物語の主人公の様子を初めのグループに戻り教え合うことで、各物語に共通した主人公の人物像についての理解を深める

理科 人の感覚(五感)についての学習で、各グループ内でそれぞれの担当を決める。視覚・聴覚・味覚・嗅覚・皮膚の各担当に分かれ、担当ごとにそれぞれの感覚について調べ学習をする。最後に初めのグループに戻り、調べたことを教え合い、人の感覚としてまとめる。

・LTD話し合い学習法(議論を通して学ぶという方法)

これは、Learning Through Discussion(議論を通して学ぶ)という、アメリカで開発された学習法を日本向けに翻訳しアレンジしたものです。1960年代に提唱され長い歴史をもつこの学習法は、学生が家庭学習でもアクティブに予習できたり、講義内でディスカッションをすることで共同性が身についたりして、その効果を上げてきました。 多くの大学の講義で取り入れられている学習法のひとつで、大学に限らず、小中学校や高校での教員研修にも援用され始めています。

参加者は授業者が作成した書き込み式のワークシートに記入することで予習ノートを作成しながら、教科書などの専門書(予習用資料)の内容を理解し、自分が持っている他の知識や自己の経験との関連づけを行ったうえで授業に臨む→授業では 5 人組になり、以下のステップ(計 60 分)にしたがって予習ノートをもとに資料への理解と評価を深めていく

【実践例】
導入の雰囲気づくり(3 分)→言葉の定義と説明(3 分)→全体的な主張の討論(6 分)→話題の選定と討論(12 分)→他の知識との関連付け(15 分)→自己との関連付け(12 分)→学習課題の評価(3 分)→学習活動の評価(6 分)

※参照 安永悟 (2006)『実践・LTD話し合い学習法』ナカニシヤ出版

・三面騒議法(付箋をもちいて、授業の良しあしを教員同士で議論するという手法)

小中学校・高校で、教員の相互研修のために公開される研究授業の後に行われる協議会の一つ。アクティブ・ラーニングの対象は児童生徒・学生であることが多い中で、三面騒議法は、教員を対象として、その資質向上を目指したものです。3色の付箋を研究授業へ持参→良い点と改善点と他教科の応用できそうな点を付箋にコメント→コメントをもとに協議会で小グループで議論という手順で行われます。

※参照 市川伸一 (2013)『「教えて考えさせる授業」の挑戦 ―学ぶ意欲と深い理解を育む授業デザイン―』 明治図書出版

4 アクティブ・ラーニングで変わる「子ども」と学校教育

アクティブ・ラーニングによって、子どもの自主性や知識の定着の度合いが変わる、ということが現在指摘されています。しかしそれに付随して、教育の現場における「子どもの像」も変わってきていると感じることもあります。

これまでの受け身の授業は、少なからず「白紙状態(タブラ・ラサ)」の子どもに知識を注ごう、何も知らない学生に知識を刷り込むといった側面があったわけですが、アクティブ・ラーニングはあらかじめ自分の意見をもった、自立した個人を想定しています。このため、授業での教材も、一方的に知識を伝えるものではなく、学生の意見を引き出すようなものに変える必要性も出てきています。アクティブ・ラーニングでは、「児童・生徒は何も知らない」というイメージから、「自分の意見をもつことができるひとりの人間」として想定することから、始めるのがよいかもしれません。今後、日本の学校も、そのような人間を想定した設計に変わってくるようにも思います。

5  アクティブ・ラーニングの今後の課題

アクティブ・ラーニングには、先に挙げた3つのアクティブ・ラーニングの技法以外にも数え切れないほど多くの学習法が存在しています。それに、最新の研究でわかってきた学習効果についても本記事では紹介しきれませんでした。もしそれについて、もっと詳しく知りたいなら、ぜひ 最新!アクティブ・ラーニングの理論と実践の今 も、お読みください。本記事から得られた知識を自身の経験と関連づけやすくなり、理解が深まることでしょう。

アクティブラーニングの最新理論

今回の学び:

Point 1  最新の教育理論のひとつ
Point 2  聞くだけの授業ではなく、学生が積極的に参加する型の授業
Point 3  記憶・知識の定着率がよくなる、学校のテストの点数が上がるなどの高い効果があるというデータが多数

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